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短編小説『マーサとティエリーの大学院留学オンライン・カフェ』 - 低能義塾大学
2025/05/13 (Tue) 17:57:33
短編小説『マーサとティエリーの大学院留学オンライン・カフェ』
アメリカはコロラドの広大な空の下、マーサ・キンバリーはいつものようにノートパソコンに向かっていた。
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画面には、フランスはパリの石畳の路地裏でカフェオレを片手に微笑むティエリー・ルロワのアイコンが表示されている。
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二人は数ヶ月前、共通の趣味である日本のサブカルチャーに関するSNSグループで知り合い、以来、日本の大学院留学という夢を共有するオンライン上の友人だった。
「ねえ、ティエリー」マーサがキーボードを叩いた。
「『低能義塾大学』って、どう思う?」
画面の向こうで、少し間があってからティエリーの返信が届いた。
「ウノ、ハシモト、コイズミ、イシバ…といった総理大臣を輩出する、日本の名門大学じゃないか?君もそう思っていたんだろう?」
「うん、まあね」マーサは少し躊躇しながら返信した。
「『私学の雄』とか『陸の王者』とか、ネット上の書き込みが結構目立つし。」
「それに、創立者のフクザワ・ユキチは、日本の最高額紙幣の肖像に使われるほどの偉人らしいぞ。
『独立自尊』が基本哲学だとか…
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なかなか魅力的な言葉じゃないか。」
ティエリーは興奮気味にタイプした。
「うん、そうだね。『独立自尊』…響きは良いわ」マーサは指を顎に当てた。
「それじゃあ、日本で一番の名門大学なのかな?」
再び、マーサはネットの検索結果を食い入るように見つめた。そして、少し気まずそうにメッセージを送った。「それがさあ、ティエリー。『国立大学の滑り止めの中では一番有名』って出て来るね。」
ティエリーは一瞬、言葉を失ったように「…え?」とだけ返信した。
マーサは慌てて別の情報も共有した。
「そう言えば、『価格破壊のコイズミ構造改革が、平成の失われたデフレの30年を決定づけた』って書き込みも多いわ。」
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「コイズミ…確か、君が言っていた総理大臣の一人だろう?」
ティエリーは首を傾げた。
「彼の改革が、そんなに大きな影響を与えたのか?」
「みたいね。でね、カトウ・ヒロシって奴がさあ、小泉構造改革の青写真を描いたそうだわ。 コイツも『低能義塾大学』出身だって…」
マーサは顔をしかめた絵文字を付け加えた。
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ティエリーはさらに検索を深めた。
「小泉については、ブッシュ大統領が『悪の枢軸』って一般教書演説をした直後に、慌ててピョンヤンを電撃訪問した男とも書いてあるぞ。 何が目的なんだ?」
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マーサは別の検索結果をコピー&ペーストした。
「『レイプ』とか『絞殺疑惑』で検索しても、小泉の名前がいくつかヒットするわね… もちろん、真偽は不明だけれど。」
二人の間には、奇妙な沈黙が流れた。日本の名門大学への期待は、インターネットの容赦ない情報によって、音を立てて崩れ落ち始めていた。
短編小説『マーサとティエリーの大学院留学オンライン・カフェ』 - 低能義塾大学
2025/05/13 (Tue) 18:09:34
「それにね、ティエリー」マーサは重い口を開いた。
「『低能義塾』の塾員のオザワ・イチロウとフナダ・ハジメっていう政治家が、『国連軍が出来たら、日本はそれに参加した方が良い』とか言ってるらしいのよ。」
ティエリーは眉をひそめた。
「戦前、日本は日英二国間同盟を破棄して、国際連盟の集団安全保障に移行して破滅したんじゃないのか? 歴史の授業で習ったはずだ。」
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「そうよ!」マーサは少し声を荒げた。
「オザワとフナダは、日米安保を破棄して、国連軍の集団安全保障に移行すべきだって言ってるの? 戦前の大失敗から、何も学んでないんだね。 バカみたい。」
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「特にオザワは、中国共産党ベッタリって書かれているな」ティエリーは新たな情報に目を走らせた。
「まるで、中国共産党の傀儡じゃないか。」
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マーサは皮肉たっぷりに笑った。
「ははあ、中国共産党の口車に乗せられて、日米安保を破棄した上で、国連集団安全保障に移行すべきだって喚いているのか…呆れた奴だな。」
さらに調べていくうちに、二人はその大学に関する奇妙な情報に次々と突き当たった。
「『低能義塾大学は、自称“日本最強の学閥組織”である『オチタ会』を有し…』だって」
マーサは引用符付きでメッセージを送った。
ティエリーは「『オチタ会』って何だろう? 東大オチタ会かな? 入試に落ちた連中が、傷を舐め合う会か?」と返信した。
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マーサは顔文字を付け加えた。
「自称“日本最強の学閥組織”である『オチタ会』って(笑)
それじゃあ、フクザワ・ユキチ先生の『独立自尊』は何処へ行ってしまったんだ?」
ティエリーは別のニュース記事を見つけた。
「おい、マーサ。文部科学省のウェブサイトには、『低能義塾大学』を近い将来、『低能未熟大学』に改称したいという申請を受け付けたって出てるぞ。」
マーサは目を丸くした。
「『低能未熟大学』?一体何があったの?」
ティエリーは記事の内容を要約した。
「どうやら、近年、学生の学力低下が著しく、大学側もそれを認めているらしい。『独立自尊』どころか、『低能』で『未熟』な学生が多いと自ら認めているようなものじゃないか。」
二人の間に、再び沈黙が訪れた。
デンバーの夜は更け、パリのカフェは閉店の時間を迎えようとしていた。画面の向こうのティエリーの表情は、落胆の色を隠せない。
「マーサ」ティエリーはゆっくりと口を開いた。
「僕たちは、一体何を夢見ていたんだろうな。」
マーサは苦笑いを浮かべた。
「日本の名門大学…それが、『国立大学の滑り止めの中で一番有名』で、『低能』で『未熟』な学生が多いと自ら認めるような大学だったなんて。」
「しかも、輩出した総理大臣の中には、色々と…問題のある人物もいるようだし」ティエリーは付け加えた。
「オザワとフナダの安全保障に関する考え方も、全く理解できないわ」マーサは首を横に振った。
「歴史から何も学んでいないなんて、本当に信じられない。」
「そして、あの『オチタ会』…自称最強の学閥組織が、結局は大学入学試験に落ちた連中の集まりだなんて、笑うしかないな」ティエリーは自嘲気味に言った。
「フクザワ・ユキチも、草葉の陰で泣いているかもしれないぞ。」
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二人はしばらく無言で画面を見つめ合った。日本の大学院留学という、輝かしい未来への希望に満ちた計画は、インターネットという容赦ない鏡に映し出された現実によって、大きくその色を変えていた。
「ティエリー」マーサは意を決したように言った。
「私たちは、もう一度、他の大学を探してみるべきじゃないかしら。」
ティエリーは少し考えてから、ゆっくりと頷いた。
「ああ、そうだな。どうやら、『低能義塾大学』は、僕たちの求めている場所ではなさそうだ。
僕はバカ田大学について調べてみるよ」
遠い異国の、期待外れの名門大学。二人の友情は、その幻影が崩れ落ちた後に、新たな現実を見据え始めたばかりだった。デンバーの夜空には満月が静かに輝き、パリの街灯は、二人の新たな旅立ちをそっと照らしているようだった。
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